甘たるく感傷的な歌



 その日は 明るい野の花であつた
 まつむし草 桔梗 ぎぼうしゆ をみなへしと
 名を呼びながら摘んでゐた
 私たちの大きな腕の輪に

 また或るときは名を知らない花ばかりの
 花束を私はおまへにつくつてあげた
 それが何かのしるしのやうに
 おまへはそれを胸に抱いた

 その日はすぎた あの道はこの道と
 この道はあの道と 告げる人も もう
 おまへではなくなつた!

 私の今の悲しみのやうに 叢には
 一むらの花もつけない草の葉が
 さびしく 曇つて そよいでゐる