或る宵



 おお、この夕焼のなんという比類なき荘厳、
 そして私の胸にみちる
 生きる事への今さらの悦び!

 おもむろに闇の湧きあがる
 暗い緑の竹林の上に
 冴えてくる金いろの月、
 その下にきらめく星の一粒、
 夕焼と月光とのわかちがたい草の葉を、
 さざなみ打たせて風がとおる。
 うるわしい西天の無際涯の海に
 とおく吸いよせられた心が
 またも身のまわりの大地に帰る。
 私の悦びは水の響きとなり、葉のそよぎとなり、
 また空間をちりばめる冬の梢となって、
 熱情の炎の根から花咲く詩をつづる。

 おおこの夕焼のなんという比類なき荘厳、
 そしてこの月光のなんという神秘な静寂!
 天に、大地に、草木に、水に、
 ちらばり光る無量の思想に貫かれつつ
 不死の愛讃に生きるなんという悦び!