「鹿児島旅行」



 飛行機で 遠い血の繋がりの親戚のいる鹿児島の指宿へ
 ギターを持って 何日も滞在できる荷物を持って
 以前の約束通り大邸宅で僕を養子に迎えるのを待っているのだろうと
 きっとそこら中に薩摩隼人がいて自顕流の稽古でもしているのだろうと期待を胸に

 大金持ちの大邸宅と聞いていたが なんだただのぼろ屋
 面白くもない錦港湾 詰まらない桜島 洗脳されたような人々 空港の案内役の人には薩摩隼人の風があったが(城山に行かなかった 知らなかったんだ 大失敗)
 車で案内してくれた長崎鼻の海は綺麗だった 池田湖のお化けなまずは面白かった

 さて家主の中村操は下郎爺 いつも目をひょこひょこ揺らしてる
 二日目の夜 酒を飲みながら手酷く侮辱される 僕は駄目人間と(それに今から戦争したいだと!)
 深夜 錦後湾の浜でギターを弾きながら復讐を考える
 腕立て伏せをして何があってもいいように準備をする

 翌朝決行 電話帳片手に緊張した声で「酔ってるからって調子に乗って何でも言っていいってもんじゃないですよ」 
 相手は力を使ってくる 僕は無抵抗
 逃げたから「聞いてりゃいいんだよ」と電話帳で車のサイドミラーをぶっ叩き 塵取りを屋根の上に蹴っ飛ばす
 「常識的観点から言ってやるから座って聞け!」電話帳を投げつけ家の中で僕は怒鳴る 奴ら夫婦は熊本の義文に迎えに来させようと電話機の辺りを漁っている 
 終いには爺は外に逃げ出す
 妻は良く出来た妻 その後昼食も用意してくれる(何であんな奴と結婚したんだ?)
 帰りは駅まで車で送ってくれる 車から出た瞬間に冷たく急発進してしまったが

 鹿児島市に向かう電車の中 僕は思いに耽る「暴れておいて良かった そうでなければ記憶にいつまでも突き刺さったままだったろうに」

 期待を裏切られた旅行だった 邸宅も 隼人もいずに

 熊本に向かう肥薩線の特急の中 僕は椅子を寝倒し 顔をハンカチで覆って 僕の夢の歌を歌う
 「星が瞬く夜は落ちるよ 沈みゆく街に浮かぶ 僕の夢が歩き回る......」

 いつの間にこんな所にまで来てしまったのだろうか......


                  by ひかる 2001/12/6 (2001/12/20改訂)