歌章 四.一〇



             つれな
おお、これほどまでに強顔い子よ。
 色恋のわざも、弁へぬではない身なのを。
だが驕慢な君のこころに
 思ひがけない柔毛が生えて来るとき、
そいで今、肩のあたりに垂れなびく
     あげまき
  その総角が切って落され、 
また今でこそ真紅の薔薇の
  花にも優るその紅頬が、
一変して、リグリーヌスよ、もさついた
  興ざめな顔となり終つたとき、
鏡に向ひ、別人のやうな姿を見る
  度ごとに、嘆いて君は言はうぞ、
ああ、何故今日のこの考へを同じくは
  少年の日に持たなかつたか、
いや、何故もとどほりの神妙な頬が
  この気持にまた帰つては
          来てくれないか、と。