草に



 八月の夕ぐれの太陽が
 その光と熱との黄金の網をおんみらの上に投げかける時、
 ああ、透明にあかるい無数の草よ、
 風に吹かれる爽やかな地の子供らよ、
 私はやがておんみらに来る生の完成のよろこびを、
 その黄いろい秋の快活を知っている。

 遠く傾いて、けむる晩夏の薄赤い日ざしが
 おんみらの上へ私の影を横たわらせる。
 草よ、
 いちはやく路のべの緑に血の色をまじえ、
 熱烈な金銀の実をむすぶ名も知らぬ草よ!
 私はおんみらの生命の正しい過程を、
 又おんみらの言葉なき宇宙の歌を、
 私の存在の深い奥底で理解する。
 
 やがてこの円球の上に秋がまったく満ちる時、
 すでに灰いろの木立が最初の葉をおとす朝から、
 風になびく白い穂、ひかる茎、
 天地の間に音たてて爆ぜる真紅の莢、
 草よ!
 おんみらの生命もまた満ちて、
 最も美しい生涯がそこに成就されるだろう。

 そして私もまた生きるもの、
 冬に向かう立木まばらな地の上で
 私自身のあすの道をえらぶだろう、
 こがらしにあける暁の地平に
 ひとすじの独自の道を行くだろう。
 ああ、夕ぐれを一面にそよぎ立つ茎や葉の海、
 落日に酔っている晩夏の草よ!