人間的、あまりに人間的。
・ 美の緩慢な矢。---もっとも高貴な種類の美は、突然魅了するような美ではなく、嵐のように酔わせるように襲いかかる美ではなく(そのようなものは嘔吐を催させやすい)、人がほとんどそれとも知らずにずっと身につけているような、そして夢の中でふとめぐりあったりすることもあるが、長い間つつましくわれわれの心にかかっていた後に、ついにわれわれをすっかりつかまえて、われわれの眼を涙で、われわれの心を憧れでみたすような、あのゆっくりとしみこんでくるような美である。---われわれは美をみてなんに憧れるのであるか? 美しくあることにである、多くの幸福がそれに結びついているにちがいない、とわれわれは空想する。---しかしそれは一つの誤謬である。
・ 孤独者は語る。---非常な倦厭、不機嫌、倦怠---友なく、書籍なく、義務なく、情熱なき孤独が伴わざるを得ないこれらすべてのもの---に対する報いとして、自己と自然のなかへの最も深い沈潜の、[一日のうちに幾度となく訪れる]あの十五分間を手に入れることができるのだ。倦怠に対して完全に堡塁を築く者は、自己自身に対しても堡塁を築く者である。彼は、自己の最も内奥の泉から湧きでる最も強力な力水を決して飲むことができないだろう。