さびしき野辺



 いま だれかが 私に
 花の名を ささやいて行つた
 私の耳に 風が それを告げた
 追憶の日のやうに

 いま だれかが しづかに
 身をおこす 私のそばに
 もつれ飛ぶ ちひさい蝶らに
 手をさしのべるやうに

 ああ しかし と
 なぜ私は いふのだらう
 そのひとは だれでもいい と

 いま だれかが とほく
 私の名を 呼んでゐる......ああ しかし
 私は答へない おまへ だれでもないひとに