山荘をとざす



 もういちど家の中を見てまわる。
 がらんとした本棚、一物もとどめぬ机、
 残してゆく調度や家具......
 生活の余韻と新しい空虚とが
 まだどの部屋でも対立している気配だ。
 これからおもむろに沈黙の時がはじまって、
 家はやがて一冬の永い無住を眠るのだろう。
  

 窓も雨戸ものこらず締めた。
 幾週間の夏の成果は鞄の底におさめてある。
 その鞄も荷物も玄関に並んでいる。
 電灯のスイッチを切り、柱時計の振子をとめる。
 迎えの車が離愁をそそる警笛を響かせて
 もう森の中を近づいて来る。
 そとへ出て鍵をかける。
 樹々を打つ秋雨の奥で黄びたきひがらが鳴いている。
 雨蛙も鳴いている。
 自動車が大きくカーヴを切って、
 濡れた芝草の中にぐいと停まる。
 ドアがあく。
 乗る。
  しょうしょう
 雨蕭々、小鳥の声......
 断絶のドアがばたんと締まる。