短歌
人住まぬいくさのあとの崩れ家杏の花の咲きてけるかな
朝日さす小池の氷半ば解けて尾をふる鯉のうれしくもあるか
聞きなれし老いぼれ声の納豆売此冬は来ずなりにけるかな
我庵に来ると来る蚊を焼尽し裸涼しく書を読まばや
夕つつのかがやく空は暮れにけり明日の日和の晴も知るべく
蝉鳴きて涼しき森の下道を旅行く人の過ぎがてぬかも
冬枯の花なき園に飛ぶ蝶のけふの命に嵐ふくなり
病みこもるガラスの窓の窓の外の物干竿に鴉なく見ゆ
瓶にさす藤の花ぶさ花垂れて病の床に春暮れんとす
歌の会開かんと思ふ日も過ぎて散りがたになる山吹の花
いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春行かんとす
枕へに友なき時は鉢植の梅に向ひて歌考へつつ