うたふやうにゆつくりと......



 日なたには いつものやうに しづかな影が
 こまかい模様を編んでゐた 淡く しかしはつきりと
 花びらと 枝と 梢と---何もかも......
 すべては そして かなしげに うつら うつらしてゐた

 私は待ちうけてゐた 一心に 私は
 見つめてゐた 山の向うの また
 山の向うの空をみたしてゐるきらきらする青を
 ながされて行く浮雲を 煙を......

 古い小川はまたうたつてゐた 小鳥も
 たのしくさへづつてゐた きく人もゐないのに
 風と風とはささやきかはしてゐた かすかな言葉を

 ああ 不思議な四月よ! 私は 心もはりさけるほど
 待ちうけてゐた 私の日々を優しくするひとを
 私は 見つめてゐた---風と 影とを......