ヴェネチア




 鳶色の夜がおり
 橋のたもとに佇っていた。
 遠くからの唄声が近づくと
 金色の綾が水面に湧き
 うちふるえ、ひろがった。
 ゴンドラよ、ともしびよ、音楽よ---
 闇をわけて陶酔は遠ざかった......
 
 わが魂の奥の絃も
 目に見えぬ手に触れられて
 ゴンドラの唄をひそかにかなでる
 奇しい幸福にふるえおののいて。
 ---耳傾けるひとは誰?