「闇の扉」



             (序)
 手に届かない あの人を求めているかのようだ

             (T)
 世界には秩序があった
 吸い上げられてしまいそうな 淡い水色の空
 出発は 赤い花の歓迎と一陣の風の全身の愛撫
 帰還には 光の永遠の口づけ
 私が大地にむかって叫ぶと
 地底の奥底で私の声がこだました
 私は決して飢えることのない 一匹の草原の蜂であった

             (U)
 そして混沌(カオス)は訪れた
 幼子は産声を高らかに響かせ
 それは空気も伝わらずに 稲妻のように私の耳を奮え上がらせた
 天使は銀の槍を地に突き落ろし
 彼方に広がる雲は 一点に凝縮し やがて静かに消え去ってしまった
 おお! そして...  そして大天使は最後のラッパを高らかに吹き鳴らした!

             (V)
 それから しばしの静寂が訪れ
 そして 私は土くれの中で 何か小さな物が 転げ落ちる音を耳にした.




                                by ひかる  1993/4/14